技術解説

半導体リソグラフィのロードマップと今後の技術動向

2024.02.03

半導体リソグラフィのロードマップと今後の技術動向

メモリー、マイクロプロセッサ等の半導体の高集積化の要求は、携帯端末、情報機器等の高性能化に伴い益々大きくなっており、現在3nmロジックノード(最小パターン線幅12nm)のデバイス製造が行われている。
レジストパターンの解像性は、Rayleigh式 k1・λ/NA で表される(k1:プロセス定数,λ:光源の波長,NA:縮小投影レンズの開口数)。光源の波長は短いほど、縮小投影レンズの開口数は大きいほど解像性が向上することがわかり、いずれも精力的に開発されてきた。プロセス定数は照明方法、マスク、レジスト、レジストプロセスなどの様々な技術で決まる値であり、こちらも絶えず革新されている。
本稿では、これらの技術を駆使して半導体の微細化を支えるリソグラフィ技術のロードマップと今後の技術動向についてまとめる。 

1. リソグラフィ技術のロードマップの概要

図1はリソグラフィ技術のロードマップを示している。従来のKrFエキシマレーザ(248nm)から露光波長の短いArFエキシマレーザ(193nm)が開発され、2004年頃90nmのパターンに対応した。2006年頃には液浸という新しい技術をArFエキシマレーザリソグラフィに導入して65nmのパターンに対応した。なお、液浸の技術は液(水)を縮小投影レンズとレジスト膜の間に挿入することにより、光の波長を水の屈折率(1.44)で除した短波長化の効果がある。さらに2009年頃にはダブル/マルチパターニングという新しい技術をArF液浸エキシマレーザリソグラフィに導入して45nmのパターンに対応した。この技術は以来最先端デバイスの製造に適用されてきた。一方、2018年に長く待ち望まれていた露光波長が極端に短いEUV(13.5nm)リソグラフィが導入されて18nmのパターンに対応するようになった。

リソグラフィ技術のロードマップ

図1. リソグラフィ技術のロードマップ

2. 国際デバイスシステムロードマップ:IRDS

IRDS(International Roadmap for Devices and Systems)は、デバイス、システムの世界標準の道しるべである。リソグラフィについては、微細化の度合いがデバイスの種類ごとに記されている。最も微細化が進んでいるのはロジックデバイスである。2018年に最小ハーフピッチ(繰り返しパターンの一周期の半分)18nm(7nmノード)、2020年に最小ハーフピッチ15nm(5nmノード)、2022年に最小ハーフピッチ12nm(3nmノード)と2年ごとに微細化を加速させてきた。今後は2025年に最小ハーフピッチ10nm(2.1nmノード)、2028年に最小ハーフピッチ8nm(1.5nmノード)が予定されている。DRAMは、ロジックデバイスより少し微細化が遅くなり、2022年に最小ハーフピッチ17nmの後は、2025年に最小ハーフピッチ14nm、2028年に最小ハーフピッチ11nmが予定されている。NANDフラッシュメモリーは、三次元構造で集積度を上げるようになったので、最小パターンはハーフピッチ15nmで止まっている。

3. 今後のリソグラフィ技術

ライン・アンド・スペースパターンについては、7nmノード、5nmノードロジックにはArF液浸マルチパターニング、EUVが用いられてきた。3nmノードにはEUVダブルパターニング、 ArF液浸マルチパターニングが使用される。コンタクトホールパターンには、7nmノードにはArF液浸マルチパターニング、 5nmノードにはEUVが用いられてきた。3nmノードにはEUVダブルパターニングが使用される。いずれのパターンも2.1nmノード以降はNAを現在の0.33から0.55と大きくしたEUVが使用されることが見込まれている。

4. ロードマップと最先端デバイス

ロードマップの目標となる最先端デバイスはスマートフォンに用いられるロジックデバイスのCPU(Central Processing Unit:中央演算処理装置)である。iPhone 11のA13 CPUはEUVリソグラフィで初めてTSMCが製造した第二世代7nmノードロジックデバイスである。また、iPhone 12のA14 CPUは5nmノードロジックデバイス、iPhone 14 ProのA16 CPUは4nmノードロジックデバイスではそれぞれEUVリソグラフィで製造されている。なお、3nmノードプロセスはSamsungが先行しており、TSMCは2023年に3nmノードプロセスでの量産を発表している。このデバイスは次期iPhoneに搭載と推定されている。

 

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