技術解説

フォトレジストおよびリソグラフィの不具合対策

2025.01.08

フォトレジストおよびリソグラフィの不具合対策

1. はじめに

フォトレジストおよびリソグラフィは、半導体デバイスの微細加工技術として進歩を続けている。光源の短波長化、露光装置の縮小投影レンズの開口数(NA)の増大という微細化の動きに対応して開発が進められてきた。その一方、この課程で「倒れ」や「剥がれ」などの技術的な不具合(トラブル・不良)が見られるようになってきた。本稿では、フォトレジストやリソグラフィに関する不具合対策(トラブル対策)についてまとめる。

2. パターン倒れ

レジストパターンは、アスペクト比(膜厚とパターン幅の比率)が大きくなると現像・リンス時に倒れるという課題がある。これはリンス水が乾燥する際の表面張力による。表面張力の少ないリンス液や、表面張力がない超臨界乾燥なども開発されたが、それぞれ純水に比べて高価であり、専用装置が必要などの理由で広くは用いられていない。ハードマスクプロセスでは、レジストパターンをSi系の材料膜であるハードマスク(スピン・オン・グラス(SOG))にエッチング転写し、ハードマスクパターンにより基板のエッチングを行う。
ハードマスクパターンは、デバイスの構造によって除去あるいはそのまま残される(図1)。
このプロセスによれば、エッチング耐性の懸念がないことから、レジストの膜厚を薄膜化することができ、パターンのアスペクト比を低減して、レジストパターン倒れを防止することができる。

ハードマスクプロセスの画像

図1. ハードマスクプロセス

3. パターン剥がれ

基板とレジスト膜の親和力が不足してレジストパターンが剥がれるという現象がある。
この一要因としてはレジスト膜の疎水性が大きすぎるためで、レジスト組成中に親水性基を導入することが対策となっている。ArF化学増幅型レジストではラクトン基の導入が行われている。

4. 基板からの反射によるパターン形状劣化

レジストパターンを形成する際に、基板からの反射光はパターン形状の劣化、ひいては解像性の劣化を引き起こす。これを防止するために反射防止膜が広く用いられている。基板上に反射防止材料を塗布(スピンコート)し、200℃程度の高温ベークにより反射防止膜とする。レジスト膜を成膜後、露光、現像によりレジストパターンを形成するが、基板からの反射が抑えられているために正常なレジストパターンが得られる。レジストパターンをマスクとして反射防止膜のエッチングを行う。基板のエッチングを行った後、レジストとともに残っている反射防止膜は除去される。基板からの反射の影響がないEUV露光を除いて全ての露光波長で必要な技術になっている。

5. チップ内パターン均一性不良

レジストは段差上では均一に塗布できないために、露光の焦点位置がチップ内の段差の上下部で異なってくる。このような焦点位置のずれに対して十分な焦点深度があればよいが、レジストパターンの解像性向上にともなう光源の短波長化とレンズの開口数の増大により、焦点深度はますます小さくなるために良好なパターンが形成できなくなっている。
このような課題を解決する方法として、段差基板を平坦化することが行われている。CMP(Chemical Mechanical Polishing)という化学機械研磨により基板を平坦化することにより、段差の影響なく十分な焦点深度を得ることができ、チップ内でパターン均一性の良好なパターンが得られる。

6. 化学増幅型レジストのパターン不良

化学増幅型レジストでは、露光によりレジスト膜中に酸が発生するが、酸発生に伴う課題がある。図2上図は、基板上の塩基性物質などにより酸が失活し、レジストパターンがすそ引きとなる場合も表している。特にマスクエッジ部での露光強度が弱く、もともとの酸発生量が少ない箇所で酸失活の影響が強くなったためである。反射防止膜などの中性膜使用が対策として考えられる。

化学増幅型レジストのパターン不良の画像

図2. 化学増幅型レジストのパターン不良

図2中図では反対に酸が基板上で拡散して、レジストパターンがアンダーカット状になる現象を示している。酸拡散を抑制するバルキーな(嵩高い)酸発生剤の使用が考えられる。
図2下図は、レジスト露光部表面で大気中のアルカリ性不純物により酸が失活し、結果としてポリマーがアルカリ可溶とならずに、表面難溶化層(T-top)と呼ばれるひさし状のレジストパターンの発生を表している。表面難溶化層になるのは、図2上図の場合と同様で、マスクエッジ部での露光強度が弱く、もともとの酸発生量が少ない箇所で酸失活の影響が強くなったためである。ケミカルフィルタの使用により、アルカリ性不純物を低減してこの課題を解決している。

 

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