コラム

商品・製品の開発スピード向上の基本

2022.05.17

商品・製品の開発スピード向上の基本

メーカーにとって『製品開発で勝ち残る』ことは上位戦略の一つである。そして製品開発における『開発スピード向上』は、その結果として開発期間の短縮となって競争優位の源泉ともなり、先行者利益の確保や機会損失の低減など様々な経済的効果をもたらす。
しかし、実力に見合わない無理な日程短縮は、設計ミスや品質問題による手戻りロスを発生させ、かえって開発作業の混乱を招いたりする。仮に人員を追加投入して、力業で何とか日程を短縮できたとしても、開発生産性が悪化し、収益の低下を招くことはよくあることだ。 開発スピードを上げようとして、次のような問題を経験したりすることはないだろうか。

【商品・製品の開発スピード向上時の問題点】
 ・日程管理がうまくいかず、合意形成も遅れぎみ
  ⇒ 開発生産性が悪化、品質低下のリスク
 ・組織全体を有効に活用できず、設計ばかりが負荷集中
  ⇒ 負荷集中で開発生産性低下、納期優先で品質低下のリスク
 ・納期優先で検討不十分のまま次ステップに
  ⇒ 手戻り発生で開発生産性が悪化、納期優先で市場品質問題にも

つまり無理のない『商品・製品の開発スピード向上』のためには、品質と生産性についても同時に確保、向上させる必要がある。
開発期間を短縮するためのいくつかの方策は良く知られているが、それらを実践して成果を出すためには、品質や開発生産性を損なうことなく、スムーズな開発が行える環境作り(準備)が重要である。以下にそのために必要な基本事項を挙げ、そして具体的な期間短縮法(スピード向上)の方策例について述べる。

 

1. 開発スピード向上のための準備としての基本事項

基本的事項の例として挙げられるのが見える化・共有化、適度な開発管理、組織力の向上である。

(1)開発思想や開発進捗を社内で共有(開発の見える化)
開発思想や開発進捗が社内で共有(開発の見える化)されることは、商品・製品の開発を円滑に進めるための重要テーマである。

【開発状況が見えないことの弊害例】
 ・開発進捗をヒアリングする度に計画が変わっている。
 ・開発日程が予定ではなく、いつのまにか結果の記録になっている。

(2)適度な開発管理
開発管理手法の一つとして、多くの企業でデザインレビュー(DR)が実施されているが、開発管理の第一の目的は『開発の見える化』であり、開発スピード向上の障害とならない適度な開発管理が肝要である。

(3)工場全体の組織能力をもっと発揮
工場全体の組織能力をもっと発揮できれば、仕事はきっと楽になるはずである。各部署の深い専門知識(プロフェッショナル)と、他部門に関する基本的な知識と理解を持つことで、 相互依存関係にある工場組織全体の課題に対しての理解力と対応力が向上する。

 

2. 開発スピード向上のための方策

開発スピード向上のためのいくつかの方策として、圧縮、先行開発、コンカレントエンジニアリング、シミュレーション活用などがある。

(1)圧縮
プロセスの構造は変えずに、個々の活動の完了期間を作業改善等により短縮化する手法である。地味な取り組みだが、ものづくり現場改善と同様に細かい工夫や作業改善の積み重ねが大事であり、ムダが取り除かれ体質強化が期待できる。

(2)先行開発
他社との差別化や優位性確保のための重要な要素開発は難易度も高く、開発期間も多くかかかっているため、個別商品計画より先行して開発する必要がある。先行開発は中期計画に基づいて計画的に行われるものであり、開発日程にどれだけ設計思想(考え方)や課題認識を織り込めているかにかかっている。

(3)コンカレントエンジニアリング
製品開発において、複数の開発業務を同時進行させることで、開発の密度を上げて効率化し、期間短縮でスピードアップを実現する方策である。設計段階から生産技術部門・製造部門などと共同で同時に開発を進めていくので、設計者は下流工程を良く知り、組織間のコミュニケーションも良くしておかないと実行は難しい。

(4)シミュレーション活用
コンンピュータを利用して機能や動作をシミュレーションしながら製品設計する手法で、構造、熱流体、電磁波など多彩な解析が可能となっている。実物での評価実験に比べて短時間、低コストで何度でも条件を変えて繰り返し実験ができる。コンピューターの処理能力の飛躍的な向上と相まって、適用範囲の拡大と処理時間の短縮、計算精度も飛躍的に向上して身近な技術開発手法となっている。

これら紹介した方策は、代表的なものであるが、それぞれ個々の商品・製品によって様々な問題・課題があり、対応も簡単なものではない。先にもご紹介させて頂いたように、まずは現状の開発状況や体制について把握すること「見える化」が重要であり、その分析結果より、より取り組みやすく効果的な対策から取り組んでいかれることをおすすめしたい。

 

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