コラム

製品事故(リコール)の事例と法規制

2022.06.14

製品事故(リコール)の事例と法規制

1. 重大製品事故の発生件数推移とリコール事例

製造及び輸入事業者(製品を通関させ国内に入れた事業者)は、消費生活用製品安全法(以下、消安法と称す)に基づき、その関わる消費生活用製品の重大製品事故(死亡事故、治療期間30日以上の事故、消防が確認した火災事故、一酸化炭素中毒事故、後遺障害事故)発生を知った場合は10日以内に消費者庁に報告しなければならない。
この制度に基づく経産省報告書「2020年の製品事故の発生状況及び課題」によると発生年別重大事故件数推移は図1に示すように、2020年は800件超となっており電気製品の占める割合が多い。

重大事故推移の画像

図1. 消費生活用製品の重大事故件数推移(出典:経産省・報告書)

同報告書記載の重大事故発生によるリコール事例を表1に示す。事例はリチウムイオン蓄電池内蔵製品の事故であるが、表1の事例以外にノートパソコン、モバイルバッテリー、携帯電話等でもリチウムイオン蓄電池の異常による事故が多発している。リチウムイオン蓄電池は電気用品安全法(以下、電安法と称す)にて、特定電気用品以外の電気用品に指定されており、技術基準に適合することを求められている。

表1. 重大事故発生によるリコール事例(出典:経産省・報告書)

適用法令製品名リコール開始理由リコール台数
電安法折畳み式首掛け扇風機充電中にリチウムイオン蓄電池からの液漏れ等により発火に至る可能性あり1,577
電安法電動アシスト自転車用バッテリー発火の可能性あり346,291

また、生命身体に影響するおそれがあり、法令違反に基づきリコール開始となった事例を表2に示す。国にはリコールを命じる権限が付与されていることを認識する必要がある。

表2. 法令違反によるリコール開始事例(出典:経産省・報告書)

適用法令製品名リコール理由法令違反項目リコール台数
電安法ソファ電源コードより出火のおそれ技術基準不適合60
消安法乗車用ヘルメット特別特定製品以外の特定製品(乗車用ヘルメットは該当)の規定に不適合技術基準不適合355

 

2. 消費者向け製品の法的規制

消費者向け製品に対しては表3に示す電安法消安法ガス事業法液化石油ガス法(液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律)等の製品安全に関わる法規制がある。製造及び輸入事業者は法の求める技術基準適合義務を遵守することが製品事故を起こさない第一歩ある。

表3. 消費者向け製品に関わる法規制概要

法律名規制対象品事業届出技術基準適合義務
電安法特定電気用品(構造及び使用方法からみて、特に危険又は障害の発生する恐れが多い電気用品で116品目を指定)と特定電気用品以外の電気用品(341品目を指定)製造及び輸入事業者は届出要★特定電気用品
技術基準適合を確認する自主検査の他に、登録検査機関による技術基準適合検査を受け、適合証明書を保存する
★特定電気用品以外の電気用品
技術基準適合を確認する自主検査を実施する
消安法特別特定製品(浴槽用温水循環装置等4品目)と特別特定製品以外の特定製品(石油給湯器等6品目)製造及び輸入事業者は届出要★特別特定製品
技術基準適合を確認する自主検査の他に、登録検査機関による技術基準適合検査を受け、適合証明書を保存する
★特別特定製品以外の特定製品
技術基準適合を確認する自主検査を実施する
ガス事業法都市ガス用器具にて、特定ガス用品(半密閉燃焼式ガス瞬間湯沸器等の4品目)と特定ガス用品以外のガス用品(開放燃焼式ガス瞬間湯沸器等の4品目)製造及び輸入事業者は届出できる★特定ガス用品
技術基準適合を確認する自主検査の他に、登録検査機関による技術基準適合検査を受け、適合証明書を保存する
★特定ガス用品以外のガス用品
技術基準適合を確認する自主検査を実施する
液化石油
ガス法
LPガス用器具にて、特定液化石油ガス器具(ガスこんろ等の7品目と)特定液化石油ガス器具以外の液化石油ガス器具(開放式瞬間湯沸器等の9品目)製造及び輸入事業者は届出できる★特定液化石油ガス器具
技術基準適合を確認する自主検査の他に、登録検査機関による技術基準適合検査を受け、適合証明書を保存する
★特定液化石油ガス器具以外の液化石油ガス器具
技術基準適合を確認する自主検査実施する

上記の法律では国にリコール命令の権限を付与している。適用対象品を製造、輸入又は販売する事業者は、法の目的「製品による危険及び障害の発生を防止する」を理解し、遵守することが重要である。 技術基準適合を図るに際しては技術的知見も必要となり、初めて上記法律の適用対象品と思われる製品を製造、輸入又は販売する場合は専門家の技術コンサルを受けることを推奨する。

 

株式会社英知継承では、本テーマに関して当該専門家による技術コンサルティング(技術支援・技術協力)が可能です。下記よりお気軽にお問い合わせください。

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