コラム

製品安全とリスクアセスメントの進め方

2023.03.01

製品安全とリスクアセスメントの進め方

1. 製品安全に関わる法律

1-1.一般消費者向け製品を対象とする法律

一般消費者の生命又は身体に対する危害の防止を図るために制定された法律として表1に示すものがある。法律の適用対象製品は特定品(自主検査及び登録検査機関での適合検査が必要)と特定品以外(自主検査が必要)に区分され、技術基準に適合した製品のみに適合表示マークを付けて販売することが認められている。

表1. 一般消費者向け製品の安全に関わる法律

法律名 規制対象品
自主検査及び登録検査機関
での検査実施
自主検査実施

電気用品安全法

★特定電気用品
構造及び使用方法からみて、特に危険又は障害の発生する恐れが多い電気用品で116品目を指定
★特定電気用品以外の電気用品
341品目を指定
消費生活用製品安全法 ★特別特定製品
安全性の確保が不十分な事業者がいると認められる製品で以下の4品目を指定
・乳幼児用ベッド
・携帯用レーザー応用装置
・浴槽用温水循環器
・ライター
★特別特定製品以外の特定製品
以下の6品目を指定
・家庭用の圧力鍋及び圧力釜
・乗車用ヘルメット
・登山用ロープ
・石油給湯器
・石油風呂釜
・石油ストーブ
ガス事業法 都市ガス用器具にて、
★特定ガス用品
構造・使用条件・使用状況からみて特に災害発生の恐れが多いと認められる以下の4品目を指定
・半密閉燃焼式ガス瞬間湯沸器
・半密閉燃焼式ガスストーブ
・半密閉燃焼式ガスバーナー付風呂釜
・ガス風呂バーナー
都市ガス用器具にて、
★特定ガス用品以外のガス用品
以下の4品目を指定
・開放燃焼式若しくは密閉燃焼式又は屋外式ガス瞬間湯沸器
・開放燃焼式若しくは密閉燃焼式又は屋外式のガスストーブ
・密閉燃焼式又は屋外式のガスバーナー付風呂釜
・ガスコンロ
液化石油ガス法 LPガス用器具にて、
★特定液化石油ガス器具
構造・使用条件・使用状況からみて特に災害発生の恐れが多いと認められる以下の7品目を指定
・液化石油ガスコンロ
・半密閉式液化石油ガス用瞬間湯沸器
・半密閉式液化石油ガス用バーナー付風呂釜
・風呂釜
・液化石油ガス用風呂バーナー
・半密閉燃焼式液化石油ガス用ストーブ
・液化石油ガス用ガス栓
LPガス用器具にて、
★特定液化石油ガス器具以外の液化石油ガス器具
以下の9品目を指定
・調整器
・開放式若しくは密閉燃焼式又は屋外式の液化石油ガス用瞬間湯沸器
・液化石油ガス用継手金具付高圧ホース
・開放式若しくは密閉燃焼式又は屋外式の液化石油ガス用ストーブ
・液化石油ガス用ガス漏れ警報器
・液化石油ガス用継手金具付低圧ホース
・一般ガスコンロ

 

1-2.製造物責任法の概要

一般消費者向け製品に対しては表1に示した法規制があるが、製品の瑕疵責任を負う法律として製造物責任法(PL : Product Liability,以下PL法と記す)がある。PL法は製品の欠陥によって人の生命、身体または財産に被害を被ったことを証明した場合に、被害者は製造・加工または輸入事業者に損害賠償を求めることができる法律で、その概要を表2に示す。

表2. PL法の概要

区分 項目 内容・要求事項
法律施行日 附則 2020年4月1日改正法施行(1994年公布法律)
適用対象 定義 ★日本国内で製造物の製造・加工または輸入を業とする者
★製造物に製造業者として氏名、商号、商標その他表示をした者
要求事項 製造物責任 製造物の欠陥によって他人の生命・身体又は財産を侵害(当該製造物に対してだけ発生した損害を除く)した場合は、その損害賠償をしなければならない
免責事由 下記の事実を立証した場合は賠償責任を免れる
★製造物を供給した時の科学・技術知見では欠陥の存在を見つけることが出来なかったという事実
★原材料又は部品の場合、当該原材料又は部品を使った製造物業者の設計指示によって欠陥が発生し、かつその発生に過失がない事実
消滅時効 ★損害賠償請求権は被害者が損害及び損害賠償義務者を知った時から3年間(人の生命・身体の侵害の場合は5年間)に行使しなければ時効消滅する
★損害賠償請求権は当該製造物を供給した時から10年経過した場合も時効消滅する
★身体に蓄積して人の健康に害する物質によって発生した損害又は一定の潜伏期間が経過した後に症状が現れる損害に対しては、その損害が発生した日から時効を起算する

 

1-3.PL訴訟件数と訴訟事案例

消費者庁が公表しているPL法関連訴訟一覧によると、訴訟件数(地裁、高裁、最高裁事案)は1990年から2020年の30年間に453件あるが、その事案例を表3に示す。輸入会社が被告となること、また、人体でなく犬等の動物が障害を負った場合も訴訟事案となることを認識しておく必要がある。

表3. PL訴訟事例(出典:消費者庁資料)

事件名 電気ストーブ化学物質過敏症事件 ノートパソコン搭載バッテリーパック出火事件 犬用引き紐(ひも)欠陥犬傷害事件
裁判所 東京地裁 東京地裁 名古屋高裁(一審は岐阜地裁)
提訴年 2005年 2017年 2010年9月(一審は2009年6月提訴し請求棄却)
原告 ストーブ使用者及びその両親 ノートパソコン使用者 犬用引き紐を使用した飼い主
被告 ストーブ輸入販売会社 ノートパソコン製造会社 犬用引き紐輸入販売会社
提訴内容 ストーブ輸入販売会社が輸入した電気ストーブから有害物質が発生したため、中枢神経機能障害、自立神経機能障害を発症し化学物質過敏症となったとするストーブ使用者が両親とともに被告に対し製造物責任又は不法行為に基づく損害賠償を求めた。 ノートパソコン搭載のバッテリーパックが発火し、それに起因して発生した火災により熱傷の傷害等の損害を被ったとして、製造会社に対し製造物責任又は不法行為責任に基づき損害賠償を求めた。 犬用フレキシリードを使用して飼い犬を散歩させていた際、犬が走り始めた。引き紐のブレーキボタンを押したが利かず、紐が伸びきった時に犬がジャンプし反動で仰向けに転倒してじん帯破裂の傷害を負った。飼い主がフレキシリードに欠陥があるとして被告に損害賠償を求めた。一審では欠陥が無いとして請求棄却した事案の控訴審。
判決結果 一部容認 一部容認 一審判決変更
判決確定年月 2008年8月 2019年3月 2011年10月
認容額 総額:272,566円
(内訳:両親に各0, 使用者に272,566円)
660,000円 727,600円

 

2. 製品安全とリスクアセスント

製品のリコールやPL訴訟が起これば会社経営への影響は多大のものになるが、製品事故発生リスクを低減する安全性設計手法にリスクアセスメントがある。リスクアセスメントは図1に示すように受け入れ不可能なリスクを安全方策により、受容可能なリスクまで低減させる設計手法である。 製品の開発や輸入時にリスクアセスメントを実施し、文書化・保存することを推奨する。PL訴訟事案発生した場合の「製造物を供給した時の科学・技術知見では欠陥の存在を見つけることが出来なかった」抗弁資料となる。

安全の概念のイメージ図

図1. 安全の概念(出典:(独)労働安全衛生総合研究所資料)

 

また、リスクアセスメントの実施は、図2に示したフローで行う。

リスクアセスメントの実施フロー

図2. リスクアセスメントの実施フロー(参照元:JIS)

 

① 最初に製品の使用者(子供は使用しない等)、意図する使用(温度や湿度等の使用環境条件等)及び合理的に予見できる誤使用(冷却ファンに指を誤って入れてしまう等)を明確化する。
② ①で明確化した使用上制限下で想定される危険事象(機械的、電気的、熱的等の危険源により切傷、感電、火傷等の具体的事象)を想定しリストアップする。
③ ②でリストアップした危険事象を危害の発生確率や危害酷さ等によりリスク点数を見積りする。
④ ③のリスク点数を見積する手法としては加算法、積算法、マトリクス法、リスクグラフ法等があるが、評価する製品に適した手法を選択する。
⑤ リスクが許容できる点数以下か、否かを評価する。許容できる点数以下の場合は、その危害に対してはリスク低減策の立案不要となる。
⑥ リスクが許容できる点数以下でない場合は、技術的リスク低減策を立案する。
⑦ リスク低減策実施した場合のリスク見積をする。
⑧ ④と同じ手法を用いて評価する。
⑨ リスクが許容できる点数以下であれば、残留リスクとして評価し、取扱説明書や注意銘板にて、その内容を明確化する。リスクが許容できる点数でない場合は⑥に戻り、許容できる点数以下となるまで繰り返す。
⑩ 製品試作品にてアセスメントで立案したリスク低減策が実施されているかを検査し、その結果をリスクアセスメントシートと一緒に保管する。

リスクアセスメントの実施を求める法律は無いが、表1に示した法律が適用される製品は製品事故が発生すれば回収命令が出される場合がある。また、PL法に基づく損害賠償責任を負うこともある。
経産省報告書「2020年の製品事故の発生状況及び課題」によると図3に示したように、製品事故には誤使用・不注意、経年変化、設置・修理不良に起因する事故もあり、これらはリスクアセスメントを実施し、リスク見積・評価することにより事故発生リスクを低減できる可能性がある。
また、リスクアセスメントシートは技術の継承にも繋がり、製造事業者の製品開発時及び輸入事業者の新規製品輸入時はリスクアセスメントを実施することを推奨する。

重大製品事故の原因別件数の推移

図3. 重大製品事故の原因別件数(出典:経産省・報告書)

 

リスクアセスメント評価手法は各種方法があり、また技術的知見も必要となるため、初めてリスクアセスメントを行う場合は専門家の技術コンサルティングを受けることを推奨する。

 

株式会社英知継承では、本テーマに関して当該専門家による技術コンサルティング(技術支援・技術協力)が可能です。下記よりお気軽にお問い合わせください。

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