技術解説

QCストーリーの進め方

2024.01.16

QCストーリーの進め方

職場の問題解決にあたっては、データに基づく実証的問題解決法が有効となる。これが『QC的問題解決法』と呼ばれるもので、この方法には「問題解決型」と「課題達成型」の2つがある。これらの手順に従って、1ステップずつ確実に進めていくことにより、問題や課題を早期にかつ効果的に解決できる。
今回は、その『QC的問題解決法』の手順である「問題解決型」と「課題達成型」の2つのQCストーリーの進め方について、それぞれ下記に解説する。

1. 問題解決型のQCストーリーの進め方

まずは、問題解決型の手順について下記に解説する。大きく分けて、下図の8つのステップに従って進められ、それぞれのステップでどのように取り組んでいくかを説明する。

問題解決型QCストーリーの8つのステップの画像

図1. 問題解決型QCストーリーの8つのステップ

1-1. テーマの選定

テーマの選定は、4つのポイントがあり、それぞれ説明する。

① 職場で起こっているQ(品質),C(原価),D(量・納期),S(安全),
 M(モラール),E(環境)に関する問題を抽出するようにする。
② 職場に与えられている上司の方針・目標を確認する。
③ それら問題を重要度、実現性、期待効果などの項目で評価し、グループとして取り組む
 テーマを決定する。
④ テーマは、「○○における△△の▲▲」の形とする。
 ○○:どの範囲の・・・問題解決する対象(製品名,工程名,作業名など)
 △△:何を     ・・・問題解決したい管理特性(故障件数,作業工数など)
 ▲▲:どうしたい・・・問題解決の方向・水準(低減,短縮,拡大など)

会社の目標に沿った改善活動をすることで、自分たちの活動が会社の業績にどのように貢献したか評価でき、身近なテーマとすることで改善の効果を実感できるようになる。
また、改善活動の時間には限りがあるため、改善効果が大きいものを選定すると、取り組みに対してより実感出来るようになり、改善活動が長続きする。
さらに、テーマは問題解決が文字として見える形にすることがポイントであり、これによりメンバーや周りのサポートしてくれる人たちも解決までの道筋が明確となり取り組み易い。

1-2. 現状の把握・目標の設定

現状の把握は、問題の全体と事実を正確に捉えることから始まり、次の6項目がポイントとなる。

① 三現主義で事実を集める。
② 層別し、多面的にデータを取る。
③ 管理特性の不具合の発生状況や現在の水準を知るため、時間的な変化や傾向などの必要な
 データを取得する。
④ 定量的に把握する。
⑤ 手法を活用し、ばらつきや偏りに注目する。
⑥ 目標の三要素を明確にする。
 何を   :管理特性
 いつまでに:期日
 どれだけに:方向・水準

現場に出向き自分の目で確認し、思い込みや自分の考えがデータに入ってしまっていないか、あくまでも事実を拾い集められているかを確認することが重要となる。

1-3. 活動計画の作成

現状の把握と目標の設定まで終わったら活動計画表を作成する。計画は皆が見ることができるよう掲示するなどして見える化しておくと良い。また、8つのステップを実施項目として記載しておくと、QCストーリーの漏れがなくなる。

① いつ何をするのか、日程を決める。
② やるべきことについて、誰がやるのか役割分担を決める。

1-4. 要因の解析

要因の解析には、QCの7つ道具を使用しながら行うことが多い。要因の解析では次の4つの手順で進めていく。

① テーマとして取り上げた問題の特性(攻撃対象)がどのような状況なのかデータを取り、
 パレート図,ヒストグラムなど作成する。
② 特性と要因との関連を現場・現物・現実の三現主義に基づき、技術的・経験的知識により
 考察し、要因を挙げる。
③ 特性と絞り込んだ要因との関係について、本当に関係があるか解析(調査・検証)する。
④ 特性の大きな影響を与えている主要因の検討を行い、対策項目を決める。

要因の解析では、特性要因図を用いることがよくあるため、使い方などを確認しておくと良い。

1-5. 対策の検討と実施

対策の検討と実施の段階では、次の4つを実施する。

① 対策項目についてグループ全員で対策のアイデアを出す。
② 出されたアイデアについて、具体策を出す。
③ ブレークダウンされた具体策について、実現性・費用・期待効果などの項目で評価し、
 実行案を決定する。
④ 実行案について、対策のスケジュールや役割分担を決める。

この項目では系統図法,マトリックス図法,PDPC法などにより検討をまとめることが多い。

1-6. 効果の確認

効果の確認では、下記がポイントとなる。

① 対策効果をチェックし、改善効果を確認する。
② 目標値と比較し達成度を把握する。目標に対し未達の場合は、勇気を持って現状の把握・
 要因の解析または対策の検討と実施に戻る。
③ 効果は有形効果(データでつかめるもの)のほか、無形効果(改善意欲やQC手法の活用
 など)、また、波及効果(目標値以外の有形効果)も可能な限り掴むようにする。

特に重要なのが②であり、未達の場合、どうしてもそのことを周りに知られることを恥だと感じたり、期日がないなどの要因で今ある結果を何とか料理できないかと思うこともある。それをしてしまうと、正しいQCのPDCAサイクルを回せず、そもそもきちんと現状が把握できていなかったために未達になってしまうこともあるので、怖がらずに前のステップに戻ることが重要となる。

1-7. 標準化と管理の定着

問題解決型の手順で一番重要な項目だと考えているのが標準化と管理の定着である。改善はやりっぱなしでは改善したことにはならず、対策の維持には標準化が必要となる。

① 効果の認められた対策を維持するため、標準の制改訂を行う。
② 改善効果が維持されていることをチェックするために、管理の方法を5W1Hで決める。
③ 正しい管理の方法を関係者に周知徹底する。(制改訂の理由、新標準の内容と実施日、
 新標準での仕事の要点やコツ)
④ 担当者へ教育・訓練を実施する。
⑤ 新しい仕事のやり方が守られ、得られた効果が維持していることを確認する。

定着していないと感じたときは管理方法が適切でない場合があるため、管理方法を見直して別の管理手法で定着を試してみる必要がある。

1-8. 反省と今後の対応

繰り返しではあるが、改善はやりっぱなしではなく、次につなげるためにどうすれば良いのか、考え行動する必要がある。下記のように改善のPDCAサイクルを回すことが重要となる。

① 今回対象として問題がどの程度解決され、また、未解決の部分は何かを掴む。
② 活動のプロセスを率直に反省し、良かった点はどこに有り、反省点はどこかを明確に
 する。
③ 今回の反省点を次活動の狙いにつなげ、継続的改善を実施していく。

1-9. 問題解決型QCストーリーでのQC/新QC7つ道具の使用

問題解決型のQCストーリー手順では、QCまたは新QC7つ道具を使用することが多い。それぞれのステップでよく使用されるものを表1にまとめたので、参考にして欲しい。

表1. 問題解決型のQCストーリーで使用するのQC/新QC7つ道具

ステップ12345678
テーマの選定現状の把握・目標設定活動計画の作成要因の解析対策の検討と実施効果の確認標準化と管理の定着反省と今後の対応
QC7つ道具パレート図     
特性要因図     
層別      
チェックシート  
ヒストグラム   
散布図      
グラフ/管理図
新QC7つ道具連関図法     
系統図法      
マトリックス図法      
PDPC法       
アローダイヤグラム法     
親和図法      
マトリックスデータ
解析法
        

2. 課題達成型のQCストーリーの進め方

続いてQCストーリーのもう1つの双璧である課題達成型の手順について下記に解説する。課題達成型の手順も大きく8つのステップに分けて活動し、それぞれのステップについて図2に示す。基本的には課題達成型の手順も問題解決型の手順と同じ考え方となる。

課題達成型QCストーリーの8つのステップの画像

図2. 課題達成型QCストーリーの8つのステップ

2-1. テーマの選定

テーマの選定は、問題解決型と同様に4つのポイントがある。

① 職場にある課題をいろいろな面から検討し洗い出す。
② 洗い出した課題について、重要性・緊急性・上司方針などの項目で評価し、グループと
 して取り組むテーマを決定する。
③ テーマは、「○○における△△の▲▲」の形とする。
 ○○:どの範囲の・・・課題を解決する対象(製品名,工程名,作業名など)
 △△:何を     ・・・課題を解決したい管理特性(故障件数,作業工数など)
 ▲▲:どうしたい・・・課題を解決する方向・水準(低減,短縮,拡大など)
④ テーマの選定理由は、このテーマを取り上げた目的・必要性を直接的に捉えて書く。
 だらだらと背景を書かないこと。

2-2. 攻め所と目標の設定

この項目では下記の5つの項目を行う。この攻め所がぶれてしまうと、最後の課題解決にも大きく影響するため、皆と意見を合わせしっかりと決める重要である。

① テーマの目的とする特性のありたい姿を明確にし、そのありたい姿を設定する。
② 現状の姿をありたい姿に対応して把握する。
③ 前提条件を把握し、明確にする。
④ ありたい姿と現状の姿とのギャップを把握し、「どこに重点的に方策案を検討していく
 のか」の攻め所(着眼点)を選定する。
⑤目標の三要素を明確にする。
 何を   :管理特性
 いつまでに:期日
 どれだけに:方向・水準

2-3. 活動計画の作成

現状の把握と目標の設定まで完了後、活動計画表を作成する。計画は皆が見ることができるよう掲示するなどして見える化することがポイントである。問題解決型の手順と同様に8つのステップを実施項目として記載すると漏れがなくなる。

① いつ何をするのか、日程を決める。
② やるべきことについて、誰がやるのか役割分担を決める。

2-4. 方策の立案

① 攻め所(着眼点)について、目標達成可能と思われる方策案を列挙する。
② 出された方策案から目標との関連を見て、実現性にとらわれず、期待効果の高い順に順位
 を決める。

ここでは、効果の高い順に順位を決めることが重要である。実際に容易に出来ると思われるものから順に行ってしまうと、改善効果が足りないということが起きる。

2-5. 成功シナリオの追求と実施

この段階では次の4つを実施する。

① 期待効果の高いと思われる方策を実現するためのシナリオを具体的に検討する。
② 各々のシナリオについて、期待効果を数値で予測する必要に応じ、シミュレーションの
 実施、試行、 実験などを行う。
③ シナリオ実施上の障害や悪影響を予測し、回避策や事前防止策を検討する。
④ 利害得失などを総合的に評価し、実施する具体策を成功シナリオとして選定する。

例えば、成功シナリオの選定として、実現性をコスト,工数,難易度で評価する。そのときの評価は、×は1個でもあれば不採用とし、△:1点、○:2点、◎:3点などのように点数を付け、総得点の高いものから採用として選定する方法がある。

2-6. 効果の確認

効果の確認では、問題解決型の手順と同様に3つの項目がある。

①対策効果をチェックし、改善効果を確認する。
②目標値と比較し、達成度を把握する。目標に対し、未達の場合は勇気を持って、攻め所と
 目標の設定・方策の立案・成功シナリオの追求と実施に戻る。
③効果は有形効果(データでつかめるもの)のほか、無形効果(改善意欲やQC手法の活用
 など)、 また、波及効果(目標値以外の有形効果)も可能な限り掴むようにする。

効果については、無形効果や波及効果を掴むことで、活動メンバーがより改善を継続的に行おうというポテンシャルにも繋がる。

2-7. 標準化と管理の定着

問題解決型の手順と同様、標準化と管理の定着は非常に重要である。

① 効果の認められた対策を維持するため、標準の制改訂を行う。
② 改善効果が維持されていることをチェックするために、管理の方法を5W1Hで決める。
③ 正しい管理の方法を関係者に周知徹底する。
 (制改訂の理由、新標準の内容と実施日、新標準での仕事の要点やコツ)
④ 担当者へ教育・訓練を実施する。
⑤ 新しい仕事のやり方が守られ、得られた効果が維持していることを確認する。

2-8. 反省と今後の対応

改善のPDCAサイクルを回すために、これも問題解決型の手順と同様で以下の3つを行う。

① 今回対象として問題がどの程度解決され、また、未解決の部分は何かを掴む。
② 活動のプロセスを率直に反省し、良かった点はどこに有り、反省点はどこかを明確に
 する。
③ 今回の反省点を次活動の狙いにつなげ、継続的改善を実施していく。

今回は、問題解決型と課題達成型の2つのQCストーリーの進め方の概要を紹介した。QC的問題解決法の定型に従って進めることで、漏れなくスムーズに改善活動を進めることができるため、ぜひ参考にしていただきたい。

 

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