技術解説

IoTデバイスに関連する注意すべき法規制

2024.03.22

IoTデバイスに関連する注意すべき法規制

1. IoTデバイスの急増と法規制

1-1. 世界におけるIoTデバイス数推移

IoT(Internet of Things)とは、これまでインターネットに接続されていなかった身近な物がインターネットに接続することにより、ネットワーク経由で物の情報を取得して、データの処理、分析あるいは制御を行うことであるが、身近な具体例としてはWebカメラやエアコン等のスマホによる制御がある。
世界のIoTデバイス数推移は急増傾向にあり、令和4年版情報通信白書によると2024年の世界IoTデバイス数予測値は399億台(2017年対比210%)となっている。また、その分野別成長率予測は産業用途が16.4%,コンシューマー用途が16.1%と通信分野の2.1%と比較し大きな成長率予測となっている。

1-2. IoTデバイスを規制する法律

IoTデバイスが急増している中、IoTデバイスを規制する国内の法律として図1に示した電気通信事業法と電波法がある。これらの法律の目的と規定する技術基準の概要を表1に示す。

IoTデバイスを規制する法律の画像

図1. IoTデバイスを規制する法律(出典:総務省資料)

 

表1. 電気通信事業法及び電波法の目的と技術基準概要(出典:総務省資料)

法律法の目的関係技術基準備考
電気通信事業法電気通信事業者の運営を適正かつ合理的なものとするとともに、電気通信役務の円滑な提供、利用者の利益を保護する。【端末設備に係る技術基準】
利用者が端末設備を事業用電気通信回線設備に接続する際、以下の事項を確保するために定められた技術基準
・電気通信回線設備への損傷や機能障害の回避
・他の利用者への迷惑回避
・設備の責任分界の明確化
具体的規定は以下の総務省令等にて定められている。
・端末設備等規則
・端末機器の技術基準適合認定等に関する規則
電波法電波の公平かつ能率的な利用の確保をする。【無線設備係る技術基準】
電波を発射する全てのもの(機器)に適用する技術基準
・周波数,電波の型式,送信電力等の指定(干渉回避、共有の可否等)
具体的規定は以下の電波監理委員会規則等にて定められている。
・無線設備規則

電気通信事業法・端末設備技術基準で規定されている「設備の責任分界の明確化」とは、端末設備の場合、図2に示したように、ONU(Optical Network Unit : 光回線終端装置)に接続されたLAN,ネットワーク対応TV,電話,Webカメラ等は利用者側に技術基準遵守責任があることに注意が必要である。

端末設備の責任分界を表す画像

図2. 端末設備の責任分界(出典:総務省資料)

また、端末設備が技術基準に適合した場合は、図3に示す技適マークを表示する。

技術基準適合表示の画像

図3. 技術基準適合表示(出典:総務省資料)

2. 無線設備の違反件数推移と具体的事例

電波は、通信・放送・科学等の様々な分野で利用され生活や経済活動に不可欠なものとなっているが、不法な電波の発信により携帯電話がつながらない、航空・消防・放送等の重要な無線局に混信・妨害を与える等の事例が発生している。令和5年版情報通信白書によると図4に示したように、この数年は2,000件を超える混信・妨害が起こっている。

混信・妨害件数推移の画像

図4. 混信・妨害件数推移(出典:令和5年版情報通信白書)

具体的な違反事例としては、図5に示すワイヤレスカメラや外国規格の無線機による妨害事例がある。外国規格の無線機は電波法の技術基準を満たさないことがあり、使用に際しては上記した技適マークがあることを確認することが重要である。

無線設備の妨害事例の画像

図5. 無線設備の妨害事例(出典:総務省資料)

3. 身近なIoTデバイスと電波法

技術の進歩に伴い身近なデバイスでも電波を使用している。具体例を表2に示すが、技適マークが付いていない製品は電波法違反となる恐れがあるので注意が必要である。
また、電波法により10kHz以上の高周波電流を利用する工業用加熱設備、医療用設備等(具体例はプラズマエッチング装置,MRI装置等で高周波出力が50W超のもの)は設置許可が必要となる。

表2. 電波法で規制される身近なデバイス例

品名電波法による規制電波法に基づく国の権限等
ワイヤレスマイク技適マーク付き品を使用・技術基準適合努力義務
無線設備の製造,輸入又は販売業者は技術基準に適合しない無線設備を製造,輸入又は販売しないように努めること。
・不法開設禁止
無線局を開設する場合、法で定める微弱な電波を発する設備や技適マークのある無線設備を除いて免許や登録を受けること。違反時は1年以下の懲役又は100万円以下の罰金、公共性の高い無線局に妨害を与えた場合は5年以下の懲役又は250万円以下の罰金の対象となる。
Bluetooth利用機器(イヤホン,スピーカー,マウス,キーボード等)
国外規格で製造された無線機(トランシーバー)技適マーク付き品を使用
FRS(Family Radio Service),GMRS(General Mobile Radio Service)等の米国規格で製造された機器の国内使用は電波法違反
無線LANルーター技適マーク付き品を使用

総務省ではインターネットや実店舗等にて市場に流通している無線設備を購入して、電波の強さ等を測定し技術基準に適合しているかを確認する「無線設備試買テスト」を実施している。技術基準に適合しない設備や電波の出力が基準値を超過する設備を総務省のホームページで公開している。
上記したように電波法遵守には技術基準を読み解く技術的知見も必要であり、電波を使用する製品を初めて開発、製造、輸入または販売する場合は専門家の技術コンサルティングを受けることを推奨する。

 

株式会社英知継承では、本テーマに関して当該専門家による技術コンサルティング(技術支援・技術協力)が可能です。下記よりお気軽にお問い合わせください。

 

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