コラム

プラスチックの表面加飾技術

2020.05.06

プラスチックの表面加飾技術

1. 表面加飾技術とは

表面加飾技術とは、高分子材料(プラスチック成型品)の表面意匠性などの性能を向上させるために表面へ何らかの加飾を施す技術である。これらの表面加飾技術は、従来の外観の向上や見栄えの向上に止まらず、各種の新しい機能の付与に対する関心が高まっている。
また、表面加飾技術の定義をまとめると以下の通りである。
1)他の素材を付与させて外観の向上を図ること(狭義の加飾技術)
 ・・・成形品の表面に他の素材を付与して表面性能を向上させること。
2)他の素材を付与させずに表面性能などの機能を向上させること(広義の加飾技術)
 ・・・他の素材などを付与せずに材料や成形方法の改善により表面の性能を向上させること。
本技術資料では、上記の1),2)を含む広範囲の高分子材料の表面加飾技術について取り上げる。

2. 各種の表面加飾技術の概要

主な表面加飾技術の概要を次表に示す。

加飾技術技術内容応用例*
フィルム加飾
(被覆)
貼合成形により加飾し加工後にフィルムトリミング実施高透明性PPフィルム,自動車内容部品用フィルム
フイルム加飾
(転写)
成形時に転写し離型時にフィルムの自動トリミング実施自動車内容用3次元フィルム,ドアトリム
NSD(Non Skin Decoration)表面層を付与せず金型・成形技術の向上で表面外観性を向上させる自動車内容部品(インパネなど),3次元文字表示
印刷・インクジェット印刷オンデマンド・スクリーン・パッド印刷などの活用,インクジェット印刷などの活用曲面(2次元・3次元)カラー印刷,直接印刷(ソフト基材など)
真空成膜真空蒸着,イオンプレーテイング,スパッタリングなどEMI部品,シールド材,不連続非伝導膜
構造色加飾光の波長以下の微細構造による発色現象を活用するモルフォ蝶,カワセミなどの意匠再現
その他ソフト加飾,各種印刷,塗装,メッキ,レーザーマスキングなど

(注)*本資料では一例を示したものであり、これらに限定されるものではない。

3. 表面加飾技術の技術動向

3-1. 一般的な動向

加飾技術の動向としては、単なる加飾から新しい機能性を付与した加飾への進展、従来の塗装やメッキの代替への関心が高まっている。これらの結果、自動車外装部品への展開の可能性拡大、炭素繊維複合熱可塑性樹脂(CFRTP)などの繊維複合材料への展開などが見られている。

3-2. 機能性付与加飾の動向

表面加飾の本来の目的である外観性の向上、見栄えの向上の他に機能性付与の加飾へ進展している。それらの事例は以下の通りである。
1)各種機能性の付与・・・抗菌性、帯電防止などの付与
2)表面特殊性能の付与・・・温度よる色調変化、撥水性などの付与
3)表面接触性の付与・・・柔軟性、冷感などの付与
4)表面保護性の付与・・・傷つき防止、指紋付着防止、クッション性などの付与
5)電気特性・光特性の付与・・・電波透過、赤外線透過、EMIシールドなどの付与
6)臭気特性の付与・・・芳香性などの付与

3-3. 塗装・メッキ加飾の代替

塗装やメッキは、従来から使用されてきた優れた加飾技術であるが、特殊化学物質の使用、VOC排出問題、廃棄物問題、作業性などの課題があり、代替技術の要望が高い。2項で示した代替技術への転換が図られつつある。

4. 表面加飾技術の課題と展開

これらを踏まえて、今後のプラスチックの加表面飾技術の展開として以下の方向へ向かっている。
1)表面加飾による外観性の向上と共にコストの重要性がある。
2)特に現時点では被覆・転写によるフィルム加飾が主体であるが、コストパフォーマンス
  の追及が重要であり、他の加飾技術を併せて検討することが重要である。
3)外観性の他の性能(3.2「機能性付与加飾の動向」参照)、環境特性なども考慮する必要
  がある。
4)少量多品種生産への対応、多種生産に適した加飾技術の開発も重要である。

 

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