コラム

超臨界流体による発泡成形技術の現状と動向

2022.02.08

超臨界流体による発泡成形技術の現状と動向

本記事は「超臨界流体による発泡成形技術」の現状と動向に関して概要をまとめたものである。同技術の基本的な事項を解説し、併せて同技術の特徴、今後の動向などを示した。

1. 超臨界流体とは

1-1. 超臨界流体(SCF;Super Critical Fluid)とは

物質は、温度及び圧力の条件により、固体・液体・気体の3状態をとる。圧力―温度線図(P-T線図)において圧力と温度を高めていくと、やがて一定の温度及び圧力以上になると気体と液体の両方の性質をもつ流体(領域)、即ち、密度は液体のままで分子運動が激しい気体の状態に達することが知られており、この時点を臨界点と言い、この時の物質の状態を超臨界流体と言う。また、その温度と圧力をそれぞれ臨界温度(Tc)・臨界圧力(Pc)と言う。

1-2. 超臨界流体の例

このような臨界の温度・圧力の例は表1の通りである。実際に超臨界流体による発泡成形に使用される発泡剤としては二酸化炭素、窒素などがある。

表1. 臨界温度・圧力の例

  臨界温度
【℃】
臨界圧力
【atm】
二酸化炭素 31 73
窒素 -147 33.5
374 218

1-3. 超臨界の活用

超臨界の状態の物質は、気体と液体の両方の性質を持ち、然も低粘性、高拡散性であるから液体溶媒よりも物質移動の面で有利であり、圧力変化のみで大きな溶解度差を得ることができる。この特徴を樹脂の発泡成形に活用しようと試みたものが超臨界流体による発泡成形技術である。

2. 超臨界流体による発泡成形の概要

2-1. 超臨界流体による発泡成形技術の概略経過

超臨界流体による発泡成形技術は、1979年にMITのN. Suh 教授らのグループにより発明された。その後この技術は、TREXEL社へライセンスされ、射出成形、押出成形、注型成形の順序で実用化されている(MuCellプロセス(商標)として実用化された)。更に、超臨界流体による発泡成形は多くの大学を初めとして、成形機メーカー、樹脂メーカーなどで積極的に研究されている。

2-2. 超臨界流体による発泡成形の原理

(1)超臨界流体による発泡成形技術の分類
超臨界流体による発泡成形技術は大別すると、溶融発泡成形技術のカテゴリーに属する。従って、超臨界流体による発泡成形技術では、樹脂として熱可塑性樹脂を使用し(熱硬化性樹脂でも熱可塑性挙動を持つものであれば原則として使用可能である)、発泡剤として超臨界流体を使用するものであり、物理発泡方式と見ることができる。
(2)発泡成形可能な成形方法
超臨界流体による発泡成形において採用することができる成形方法としては、射出成形法、押出成形法、吹込み成形法などである。現時点では、射出成形法及び押出成形が主体である。
(3)超臨界流体による発泡成形のプロセス概要
超臨界流体による発泡成形技術は、次のプロセス(工程)より構成されている。これらのプロセスが連続的に進行するものである。
  1)超臨界流体(発泡剤)の注入のプロセス
  2)溶融樹脂との混合(2相混合)のプロセス
  3)単一相の形成(発泡剤が溶融樹脂に溶解する)のプロセス
  4)急激な圧力変化による気液相分離(発泡体の形成)のプロセス
(4)超臨界流体による発泡成形において必要な設備
超臨界流体による発泡成形において必要な設備は以下の通りである。射出成形の場合の成形機に付属する設備関係を示す。
  1)専用のシリンダー及び2段構成のスクリュウ装置
   (樹脂の可塑化の後にSCFを注入・混練)
  2)SCF発生装置及び注入装置(インジェクター):発泡ガス昇圧及びバルブ
  3)SCF注入ソフトウエア:注入量は開閉時間で制御する

3. 超臨界流体による発泡成形の特徴

(1)期待される効果
超臨界流体による発泡成形の導入により期待される効果は以下の通りである。
  1)軽量化、充填量の低減、製品の薄肉化
  2)微細気泡の確保
  3)成形時の型締め力の低減(金型の低コスト化)
  4)不良の低減(特にそり・ひけの解消)、寸法精度の向上
  5)成形サイクルの短縮(生産性の向上)
(2)射出成形の場合の展開例
超臨界流体による発泡成形を射出成形に展開する場合の応用技術として以下の方法が検討され、最適化が図られている。
1)フルショット法
 金型のキャビテイ容積に等しい量の発泡性溶融樹脂を充填し、固化収縮分を気泡の発生・拡大により補う発泡成形方法である。
2)ショートショット法
 金型のキャビテイ容積よりも少ない量の発泡性溶融樹脂を充填し、気泡拡大により充填を完了させる発泡成形方法である。
3)コアバック法
 ムービングキャビテイ法とも呼ばれ、キャビテイ容積が可変である金型を用いる方法である。発泡性溶融樹脂を充填する際に予めキャビテイ容積を小さくしておき、充填後にキャビテイ容積を拡大することで積極的に気泡発生、拡大を促進させる発泡成形方法である。この方法が今後一般化するものと思われる。

4. 超臨界流体による発泡成形の応用展開

超臨界流体による発泡成形は、射出成形、押出成形、吹込み成形(ブロア成形)などで実用化されているので、それらの例を表2に示す。勿論、これらの例に限定されるものではない。

表2. 実用化の例(展開成功例)

成形方法 展開成功例 備考(狙い等)
射出成形 自動車部品(PAドア),OA機トナーケース(PP),
ICトレイ(PP),鉛筆ケース(PP),照明器具(PC)
GF・CF補強,微細気泡など
押出成形 PEシート,PPシート,PSシート,
PVCプロファイル成形,HDPEパイプ
軽量化・剛性維持など
吹込み成形 PETボトル 軽量化

5. 今後の課題と動向

(1)低圧射出成形機の開発
超臨界流体による発泡成形における射出成形機として、発泡ガスであるCO2やN2の昇圧装置を不要とする技術が開発されている。この装置では、ガス注入バルブの開閉時間とベント容器の圧力によって発泡剤が樹脂へ溶解する量を調整して発泡体のセル構造を制御できるものである。
(2)セル径の微細化
現時点でのセル径は10~100μm(マイクロオーダー)であるが、これをナノオーダーまで微細にしようとする研究が進んでいる。原料面の改善(樹脂、核剤)、設備面の改善(金型、成形方法)の両面からアプローチされている。今後の研究が期待されている。
(3)高発泡倍率射出成形体の成形
発泡倍率を高めるための研究も進んでいるが、現在の状況(工業的)としてはショートショット法で1.1倍程度、コアバック法で1.3倍程度が達成できている。これを更に高発泡倍率にするために検討されている。最近の例では、原材料の検討として、発泡核剤として結晶性核剤の使用、樹脂として長鎖分岐のポリマー(例:PP)の開発などにより発泡倍率20倍を達成している。実用化研究が更に進展するものと期待されている。
(4)気泡成長挙動の数値計算(シミュレーションモデルの開発)
溶融発泡成形法における気泡生成のプロセスを表わす基本モデルとして、ランプ・キャビテイ・モデル(Lump cavity model)がある。これは、発泡気泡の発生から成長過程を表わすもので、核剤から発生した気泡核⇒ガスの塊⇒塊の集合⇒泡(あわ)⇒気泡群の形成へ展開することを表わしている。また、気泡の安定性(気泡内外の圧力バランス)はキャピラリー数(剪断力と界面張力の比)で表わしている。即ち、気泡核の生成速度(J)は、最終的に材料パラメーター(A)及びシステムパラメーター(B)の関数として表わすことができると言うものである。

  J = A exp (B)

この基本モデルを展開した数値モデルが大学(例:京都大、金沢大など)や解析ソフト会社(例:セイロジャパンなど)などの研究チームから発表されており、益々実態に近い状況になっており、引き続き注目されている(紙面の都合で詳細内容は割愛する)。
(5)法規制への適合
超臨界流体による発泡成形技術で使用される製造設備及び取扱われる原材料は高圧ガス保安法、消防法、労働安全衛生法などの対象になるので、これらの法規制に適合することに留意すべきである。
(6)発泡成形条件の最適化
超臨界流体による発泡成形は発明されてから約40年経過し、新しい用途分野への製品化が展開されている。これらの新規分野におけるハードウエア及びソフトウエアの両面から成形条件の最適化が益々活発化するものと予測される。

 

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